足下

 漢方薬を取りに来るときに、かなりの確率でお土産を持ってきてくれる女性がいる。職業柄もらい物が多いお家なのだが、今日のように明らかに買ってきてくれたものも多い。気持ちはとてもありがたく、毎回素直に喜んで頂いているが、申し訳ない気持ちもかなりある。疾患によっては漢方薬が高い金額になることもあるので、それ以上のものは頂けない。  今日もシュークリームとロールケーキを頂いた。礼を言う僕に「気になるお店があったもので寄ってみただけです。良い機会でした。気にしないで下さい」と答えた。僕はこの女性を100%信頼しているから、その言葉どおりに信じるが、僕の恐縮振りを緩めてくれる優しさもこの言葉の中に秘めている。帰られてすぐにシュークリームを頂いたのだが、食べながらその言葉の言い回しを思い出して感心した。恐縮から一気に解放されている自分がいた。  この女性はハンディーを持っているお子さんのお世話が出来る人だ。いわばもっとも崇高な職業かもしれない。その対角線上で生きる僕にとってはただただ尊敬するばかりだが、もし彼女のような人が社会に増えれば、置き去りにされる人達が減るのだろうなと思ってしまう。元々備わっている天性のものか、後天的に得たものか分からないが、どちらからも得られなかった僕は、足下にも及ばない。