信頼

そこまで読めていたのだと感心する。僕は経費を捻出するだけで口出しはしない。感性の違いは天地の差だ。
 棚が設置されると建築会社の人が、1か月にわたって行われた地味な改装の請求書を渡してくれた。予想していた200万円を切っていた。いくらで約束していたのか知らないが、およその限度は言っていたので、娘がその範囲で依頼したのだろう。今日明日中に振り込むと約束して妻に渡した。
 昼頃銀行に行こうとしていた妻が机の前で、何か悩んでいた。早くすましてほしかったのだが、腰が重い。早く振り込みを済ませてほしいと催促すると、金額に不可解なところがあると言うのだ。あの地味な工事で、金額が1800万円と言うのだ。僕は午前中に手渡された時に180万円くらいで収まってくれて喜んでいたのに、何と家が建つくらいの金額。
 僕と言うより娘がとても信頼して、この数年の家や土地に関する仕事はすべてその若い男性に頼んでいるのに、これは何としたこと。一気に信頼が・・・・崩れない。請求書を作成した事務方の人、彼、僕の3人が一桁間違っていることに気が付かず、常識的な数字だけですべてが進んでいたのだ。伝票のミスなど誰も想像しないだろう。恐らく3人が3人、数字の最初の180くらいしか見ていないのだ。そのあとに〇がいくつ続くかなど見もしない。罪のない無邪気な信頼が大手を振って歩いている。そんな人間関係が僕は好きだ。