支部長

 体育館からかすかに漏れる明かりを頼りに毎晩ウォーキングをする。テニスコートの半分は明かりが届かないからほとんど闇だ。結局僕は明かりが届いて、足元も見えるところとほとんど見えないところを行ったり来たりしていることになる。
 夜歩くときは、特に空を見上げることが多い。飛行機が明かりを点滅しながら夜空を横切るのを見るのが好きだ。一度に4機が頭上を飛ぶこともある。
 昨晩もいつものように夜空を見上げたが、曇っているのかと思わせるほど星が少なかった。その中でオリオン座がこの冬初めて僕の頭上に現れてくれた。数少ない僕の星の知識でも、オリオン座くらいは分かる。夏以降、星座とはあまり巡り合わなかったから「久しぶり!」って感じだ。僕に知識があればどんな季節でも星座を見つけることができるのだろうが、やっと片手くらいの星座しか知らないのだから、夜空に住む超有名人にしか会えない。
 昔の人は長い夜にすることもなかっただろうから、みんなで星を眺めて時間をつぶしたのだろう。その中でああでもないこうでもないと想像力を働かせたのが、何と何千年も後世まで残ったってことだ。当時星たちに名前を付けた人は、ごくごく普通の人たち。学者でもない。狩をした人か、畑を耕した人か、魚を取った人かだろう。彼らの発見がまさか何千年後の人たちを夢中にさせるとは思いもよらなかっただろう。いやいや彼らに未来という認識があったかどうかもわからない。
 僕は天文ファンではないが、夜空を見上げる会の支部長くらいはできる。