のみ市

 「本当に100円?」「本当に100円でいいんですか?」「ええっ!」そんな驚きの声が聞こえてくるのは面白い。決して楽しくはない業種の薬局で小さな驚きの花が咲く。
 動機はよくわからないが、娘がゲリラのみ市と銘打って、薬局の中心にあるテーブルに自分が集めた小間物を並べた。1個100円だ。うまく表現できないが、カエルの焼き物のシリーズや備前焼の小さな花瓶や、ブローチなど。もとはそんな値段で買えるはずがないものだが、もう手放してもいいと思ったのだろう。売り上げはどうするのかと思っていたら、詳細を説明したポスターも作っていた。
 熊の写真がメインのポスターだから、熊を保護しようと言うものかとこの数日思っていたが、今詳しく読んでみると「日本熊森協会」と言う、自然の生き物があふれる森を保全しようと言う団体に寄付するらしい。
 病院の調剤や漢方薬ができるのを待つ時間に目にとめてくれるから、結構たくさん売れて、時に寄付と言って1000円札を入れてくれたりする人もいる。薬のことしか仕事としてやってこなかったから、こうした光景は新鮮で楽しい。隣の古民家を、ベトナム人が出て行ったらこのような店にしようかなどと空想する。営業的にはきつそうだが、楽しいだろうなと思う。
 薬局の中に突如として現れた異空間に、思うことあり。