勝央金時太鼓

 和太鼓ファンの僕がうかつだった。勝央金時太鼓と言うグループが県内にあることを知らなかった。名前の通り県北の勝央町にあるらしいのだが、そして勝央町で行われたコンサートに行ったこともあるのに、そのグループの名前は知らなかった。僕にとって無名のグループだから、正直余り期待はしていなかったが、十分人様の前で演奏できる力は持っていた。人数が少ないから少しばかり迫力に欠けるが、自前のコンサートを開き、公演を重ねて、新たな打ち手を募れば、もっともっと知名度も上がるのではないかと思った。コンサートを開いてくれれば、県南から今日のようにかの国の青年を連れて8人で聴きに行く。  それにしても、今日梅祭りを開催してくれた山麓窯と言う備前焼の窯元を訪ねて、認識を新たにした。と言うのは僕が知っている備前焼の作家は、ほとんどがそれでは食っていけない人ばかりだ。備前焼が空前のブームになったのを見て作家を志した人ばかりだから、自分が窯を持って焼き始めた頃には、既に時遅しで、高いものは、いやそれどころか、安いものでも売れない時代になっていた。だから全員と言っていいほど他で生計の足しにするべくアルバイトをしていた。なんとなく接点が出来た作家は沢山いたが、一人だに成功しなかった。  ところが今日訪ねた山麓窯と言うところは、広大な敷地?山?に立派な展示館を持ち、恐らく窯で働く人や、販売に従事する人などスタッフも豊富で、礼儀正しく洗練されていた。肝心の窯は見ることができなかったが、僕ら素人が想像できるレベルのものではないと思う。日曜日ごとに和太鼓のグループを招き、屋台もプロらしき人を招き、あのたくさんのスタッフを擁しなどと考えていくと「どれだけの売り上げがあるのだろう」と下衆の勘繰りが頭をよぎった。数え切れない梅の花を見せてもらって、大好きな和太鼓を聴かせてもらって、なんて時限の低いことが頭をよぎったのだろうと、われながらいやになるが、それは嫉妬ではなく、僕もやりたいと思ったのだ。こんなに大掛かりなことは出来ないが、薬局の前の駐車場を開放して、屋台でも何でも有意義に使ってもらえればいいなと考えたのだ。僕にはあれだけの経済力がないから大それたことは出来ないが、人様に喜んでいただくことに徹している姿を見て感心しきりだ。