夜道

 仕事が終わってから出かけなければならない用事があった。7時にシャッターを下ろしそのまま車で出かけた。牛窓から出る二つ目のなだらかな峠を下りていた時、100メートルくらい前方にテールランプが見えた。ただそのテールランプが時には離れ、時には接近するから車ではないようだった。時速40kmの制限速度の道路だから、わずかにそれを上回るスピードで僕は車を走らせていたが、なかなか追いつかなかった。そしてその坂道が終わった頃、やっと近づいた。街路灯もないような県道だから、接近して初めてテールランプが2台の自転車のものだとわかった。ただ、その自転車になかなか追いつけなくて、その上なかなか追い越せなかった。
 直線道路に出て安全なところで、やっと追い越しをかけた。気になって速度メーターを見たら60kmだった。僕はたかが自転車を追い越すために60kmのスピードを出したことになる。追い越しざまに自転車の様子も見たのだが、例の宇宙人みたいなヘルメットをかぶった若者風だった。かなりの前傾姿勢で漕いでいたから、懸命の疾走だったのだろう。それにしても一体何キロの速さで彼らは自転車をこいでいたのだろう。それが驚きだった。夜道を急いで帰っていたのか、はたまた訓練なのかよくわからないが、自転車の性能と人間との共演で、こんなことができるのだと、夜道のパフォーマンスに拍手。