緞帳

 草むらを歩いていて、手にツタが絡まって取り払おうとしても全く取れない。最初は単に絡まっただけだと思い、それなりの動作で取り払おうとしたのだが、いつもと違うことに気が付いた。まるで何か、想像したのは蛇みたいな生き物に手を銜えられて抜けない感じに思えた。そこで初めて慌ててその場から逃げようとしたが、まったく手が抜けない。そこからは必死。懸命にもがいて自分の手を草むらから出してみると、まさに銜えられていた。それがなんと巨大なムカデなのだ。ムカデに刺されるならわかるが手を銜えられているのだ。そこで必死にムカデの口を開き腕を抜くことができた。
 まさに悪夢。なぜこのような夢を見たのだろう。多くの期待を寄せていただいているのに体調がいまいちで応えられないもどかしさか。漢方薬を服用していただいての改善率をもっと上げなければならないプレッシャーか。
 僕が問診で大切にしている「悪夢を見ますか?」はまさに自身の体験からなのだ。心と頭と体が、それぞれ別のベクトルに向かって作動していることをうかがわせる事象だからだ。頑張っていても、怠けていてもまるで通信簿のように現れる。人生に夢など見ることができない世代になって、皮肉なことに毎夜夢劇場の緞帳が上がる。