音声入力装置

 常々、僕の体調を心配してくださっている税理士の先生が、インターネットにめっぽう詳しいスタッフを遣わしてくれて、今日、音声入力装置なるものを設置してくれた。パソコンの中がどうなったのか分からないが、目に見えるのはスタンド型のスマートなマイクだけだ。使用方法もいたって簡単ですぐ使えた。若いスタッフの方が実際に税理士事務所で操作してみて、精度がかなり高いから勧められたものだ。
 彼が帰ってから早速実地に使ってみた。ちょうどガス漏れの新しい相談があったので、慣れるにはうってつけだ。
「ガスが漏れるときにいい音がしますか?」
読み返してみて、こんな失礼なことを僕が口にしたのかなと思った。そんなはずはない。そしてこの変換の誤りを考えてみた。するとあることに気が付いた。パソコンに向かって話しかけるなんて、人が見たらバカみたいな光景で自分でも照れながらやっていたと思うのだが、そして初めてだから、はっきり発音をしようとし「ガスがー、漏れるときにー、音がしますかー?」と発音してしまったのだ。「漏れるときに」の箇所で末尾を伸ばしたのだ。「に」を「にー」と。それが「いい」と変換されたのだと思う。ガス漏れでいい音がしてもらっては困る。
 悪意が全くなくてもこれでは気分を損ねてしまう。これだけ技術が進んでも、やはりかなりの間違いはあるものとして利用しなければならない。示唆に富んだ誤変換だった。
 自分でキーをたたくのと、変換をいちいち点検するのとどちらが僕にとって有用なのかと考えてしまう。
 恐らく1日13時間から14時間働いていると思うが、2000円ぽっちのマイクに果たしてどのくらい助けてもらえるのだろう。ただいつも気にかけてくださっている税理士の先生や若いスタッフには感謝だ。
 ちなみにこの文章はすべて手打ち。