十分

 手が空いた時に取るのが僕の昼食。あかなかったら取れない。4時ごろまでに取れなければ、もう食べない。夕食にかなり近くなるから。
 今日も少し遅めに2階に上がると食卓の上に駅弁が置いてあった。これは広島から応援に来てくれる薬剤師に妻が買って来てと頼んだものだ。岡山駅で新幹線から赤穂線に乗り換えるときの時間を利用して買ってくれるのだと思う。憧れの駅弁はやはりおいしいものだ。業務を手伝ってくれることへの感謝と、美味しい昼食を買って来てくれることの楽しみで、水曜日と土曜日は心と体が少し楽になれる有難い日だ。
 今だ嘗て電車の中で駅弁を食べた記憶はない。学生の頃は高くて手が出なかった。働き出しては、駅弁が必要なくらい長距離を移動することがない。せいぜい広島か京都あたりだから、あっという間に着いてしまう。せいぜい僕が口にするのはサンドイッチかコーヒーだが、コンビニで手に入る。
 車窓から流れゆく景色を眺めながら弁当を食べるのは、格別美味しいのだろうが、経験がないからわからない。ただ確信を持って言えるのは、景色は流れなくても、テレビのニュースを見ながらでも、美味しいものは美味しい。
 何やら弁当箱には、姫路のコメを使い、姫路の卵を使い、姫路の?忘れた。4種類姫路産の素材を使っていることをアピールしていた。それにこだわりは一切ないが、とにかく多くの方の洗礼を受けて存在し続けている強者ぞろいだから美味しいものは美味しいのだろう。僕にはそれで十分だ。