広島城

 3時半まで広島市のホテルで漢方の勉強をしていたのに、もう夕食を家で食べてしまった。丁度6時だ。なんてことだ、今日はみっちり下調べをして、勉強の後、広島城に行ってみようと思っていたのに。  ホテルに一番近い電停から5つ目の電停で降りる。そこから徒歩で15分かかって城に着く。電車は入口から乗り、出口で160円払いそのまま降りる。釣り銭がいらないように、10円玉と50円玉は財布に入れていた。  それがなんてことだ。先輩薬剤師の一言で気持ちが萎えてしまった。尾道から出席しているその先生は、僕が事務方を務めている漢方の勉強会の会長なのだが、「あなたねえ、広島城より岡山城の方がいいですわよ」だって。広島県の人だから広島城を良く知っている。もう岡山の勉強会も30年近くやっていて、ほぼ皆勤だから岡山も詳しい。その先生が自信を持って言われたから、その時点で僕の計画は終わった。慣れ親しんでいる岡山城より劣ると言われてその気にはなれない。もうこうなれば、姫路の白鷺城の修理の完成を待つしかない。さすがの?岡山城も白鷺城には勝てない。比べものにならないくらいの差がある。いくら郷土愛があっても太刀打ちできない。  さて、今日の漢方の勉強はメーカー主催だったのだが、痴呆に効果がある生薬を見つけてそれを商品化したという案内だった。その研究に携わってきた大学の先生が色々教えてくれたのだが、僕の学生時代と同じ光景がそこにはあった。一言で言うと、「難しくてわからん」ただ当時と今で違うこともある。分からないけど懸命に聞いている僕がいた。当時は、返事をして教室を出るか、そもそも教室に入らないかのどっちかだったので40年近くなってやっとまともに近づいた。 「先生、新製品は自分が飲むためでないの?」と僕も一矢報いた。でも先生も堂々としている。「そりゃあそうよ、自分の身が一番だからねえ」なるほど、僕ももう10数年現役でいれば、あのように堂々としておれる。