出る幕

 僕のパソコンの故障は漢方薬の問屋の専務さんにすべて解決してもらっているが、妻のは故障自体が珍しいと言うか初めてかもしれない。妻のは税理士事務所とつながっているから、そしてそこにもパソコンが得意な方がいるからそちらに連絡した。電話で状況を説明すると修復作業を電話で誘導するのはむつかしいと判断したのだろう、2時間後くらいに岡山市から来てくれた。
 ここから単語を知らない僕が説明するのはかなり難しいが、なるべくわかるように表現してみる。ディスプレーのスイッチを入れる前に電源を入れるパソコンの外に独立してある直方体のケースがあるが、そのカバーを外し、彼はその中を点検し始めた。幾種類もある小さなドライバーを持参していて、まるで昔の時計屋さんのように細かい作業を始めた。
 小一時間でその作業は終わり、パソコンを立ち上げた。すると昨夜から反応しなかった画面が久しぶりにいつもの画面を表示した。しかし、そこからよくは分からないが、パソコンが何やら作業をしている。彼もじっと画面を眺めている。今どういった状況なのかと尋ねてみると「パソコンがどこが悪いか見つけてどう修復したらいいか考え実行している」と言うようなことを教えてくれた。正確には理解できていないから、正確に復唱は出来ていないがそのような内容だったと思う。結局は完全には治らなかったみたいで。何かをして直してきますと言ってその機械を外して持って帰った。
 この一連の出来事は、税理士事務所の若いスタッフの方が行ったことだ。パソコンの腕を買われて税理士の先生にリクルートされたのだがプロのパソコンの技術者ではない。好きが高じればこんなことができるのだとまさに驚きの光景だった。下手に学校でよい成績を取るより、これからの時代はパソコンお宅になった方がいいのではないかと思われるくらい、僕にとっては神秘的な世界だった。まるで後光がさしている。薬剤師などまるで地味なもので輝きがない。今の時代に生まれていなくてよかったとつくづく思わされた。僕みたいに機械音痴だとまるで出る幕がない。