糸電話

 作業が終わって帰りがけにお礼を言う僕に「めちゃくちゃ頑張りました」と笑顔で帰っていったが、実際に僕にはそのめちゃくちゃが想像できない。ただ言えるのは僕にとって彼はまさに「神の手」

 仕事が終わってシャッターを下ろしたときに電話がかかってきて、新しいパソコンを持ってきたと電話がかかってきた。彼自身も仕事を終えてから来てくれたのだろう。

 手には新しいパソコンを持っていたが問題は、壊れたパソコンからデータがすべて移すことができたかどうかだ。もしデータがなかったら、膨大な作業を強いられることになる。前回壊れたパソコンからデータが取り出せなかったので、かなりの作業をした悪夢がよみがえる。ただし今回は運よくすべてのデータが取り出され、何の不自由なく作業を再開することができるらしい。

 パソコンを分解して故障を直すことができる彼でもなお、手のつけようがなかったものからデータをすべて取り出せたのは、僕にとっては奇跡、神の手。

しかし、彼にとっては高々奥の手?片手?揉み手?合いの手?やめて?

 数日間のストレスからこれでやっと解放される・・・と思いきや、インターネットが無線ではなく有線だと気が付かなかったせいで、数日待たなくてはならなくなったが、そんなこと解放された僕のストレスからいうと取るに足らないレベル。「今はほとんど無線」らしいが、何でも時代遅れの僕にとっては「糸電話」でないことでも儲けもの。