雑味

 雑味という言葉を聞いたのは、いや見たのは初めてのような気がする。たまたま妻が飲んでいたペットボトル入りのコーヒーを見ていて、目を引かれた。おそらく初めて目にする熟語だったから興味をひかれたのだと思う。
 意味は何となく分かる。何か混ざりものが入っていて純粋な味がしないというものだと思う。辞書で調べてみたら「飲食物のなかに入りまじって、本来の味を損なう味。特に、日本酒の味にいう。」と出ていた。僕が見たコーヒーにも「雑味のぞいてすっきり」と書かれていたから、夾雑物を取り除いたという意味にとってもいいと思う。味そのものが純粋でないといわれても実際には何かが混ざっていないと味は作られないから。「期待せぬ物が混じっている」と同義語だと思う。
 僕は日本酒はもとより、コーヒーも純粋なもの?求められる味の究極を知らない。もっと言えば人間の姿さえ、どれが究極の理想像かわからない。どんなものであっても必ず好ましくないものは混ざってしまいそうで、純粋というものはなかなか到達しないだろう。えてして、不純物が混ざっているからバランスを保っている場合も多いのではないかと思う。腸内環境だって、細菌だって、ウイルスだって、招かれざる者がいてこその自然の形のような気がする。
 世界も中国やロシアや北朝鮮があって成り立っているし、心の清い人が多い日本人も汚部やカスがいてバランスを保つ。僕は雑味を受け入れて暮らそうと思っている。と言うより、僕自身が雑味かもしれない。