破壊力

 千葉に住む姉はもうずいぶんと長い間2階に幽閉されているという。こういうとなんだかミステリー小説みたいだが、家族がコロナ感染を恐れて幽閉しているらしい。テレビで「おばあちゃんに移してはいけないから、外出を自粛する」などと言う殊勝な若者を見て、なんて優しいのだろうと思うが、僕の身内にもずいぶんと優しい子たちがいるものだ。子と言うのは正しくはないが、甥はいつまでも甥だから、50歳を過ぎてもそう呼んでしまう。
 幽閉などと言うとなんだか、閉じ込められている被害者みたいだが、若い甥たちは仕事で毎日出かけるから、いつウイルスを持ち帰るかもしれない。だから姉に移さないために階下に降りてくることを禁じているみたいだ。食事も運んでくれるらしい。
 こうした環境の人は都会には結構いるみたいで、同じ境遇の人同士でSNSデビューをして楽しんでいるらしい。携帯電話も持ったことがない僕には、80歳代の人たちの積極性に圧倒される。人生の最終章をコロナごときで品行方正な人たちが汚されてはたまらない。なるべくしてなる人を飛び越えてしまった破壊力にみんなが戸惑っている。