呼吸

 「こりゃあ、駄目じゃ」
 写真を見てすぐに思った。この環境で健康に暮らすのはむつかしい。少なくとも僕は無理。
 今日、東京のある方が、健康相談のついでに写真を張り付けて送ってくれた。ご本人が住んでいる区の風景らしくて、おそらくご自分のマンションから写したものだろう。電話相談の度に色々な会話をするからバックグラウンドを僕に教えてくれたのだと思うが、意外と僕にとっては有用だ。
 ご本人は「いらないと思いますが・・・・」と枕詞で述べ、「しょうもない画像で失礼しました。」と自虐で終わっているが、彼女の健康状態を把握し、最適の薬を見つける作業にはとても役に立つと思った。それは近所に麻原彰晃ホリエモン、ゴーンが仮住まいしていた塀に囲まれた建物があるからではない。天気が良ければ、富士山も見え、工場の屋根の上からかすかにスカイツリーがのぞいてからではない。建物だらけの無機質な風景だったからだ。すべてを網羅した写真ではなく、一方向だけしか見ることはできないが、おそらく360度、同じようなものだと思う。緑も青も乏しいまるで墨絵のような光景だ。
 もともとは田舎の出身の方だから、潜在的な自然の欲求はあると思う。育ったころの記憶には必ず豊かな自然の光景があっただろう。呼吸を忘れた大都会で、脈打つことはできない。