破綻

 国が破綻しているという状況を想像できない。ただそのようにタイトルを付けられると、何故か中東のコンクリートの建物が無残に破壊されている状況を連想してしまう。必ずしもその光景としかリンクできないとは限らないはずだが、浮かぶのは決まってその映像だ。  世の中の目を汚輪ピックに釘付けにしている頃、「シリア東部の激戦地アレッポで活動する医師15人が12日までに連名でオバマ米大統領に宛てた書簡を公表し、現地の窮状を訴えて具体的な行動を要請した。涙も同情も祈りも不要。必要なのは行動だ」と。  皮肉なものだ。戦争の当事者であるアメリカに頼まなければならないとは。「 15人の医師たちは、今もアレッポに残る30万人のために、負傷者や病人の手当てを続ける。書簡では米国の対応について、包囲を解除させようという努力も、市民を守るために影響力を行使しようという姿勢さえも見られないと批判した」 「私たちが最もつらいのは、誰を生かし、誰を死なせるかを選ばなければならないことだ。幼い子どもたちが重傷を負って救急室に運ばれてくれば、可能性が大きい方を優先せざるを得ない。助けるための機材がないこともある。2週間前、爆発で保育器への酸素の供給が断たれ、新生児4人が空気を求めてあえぎながら窒息死した。まだ始まったばかりの命が終わった。それでも私たちはここにいることを選び、助けを必要とする人たちを助けると誓った」  僕は、シリアでどんな勢力が利権をむさぼっているのか知らない。ただ国家と言う名の殺人集団は知っている。一部の権力を握っている奴らが自分達の利益のために若者を使って人殺しをしている。自分が殺せば死刑だが、人を使って殺せば政治屋だ。  「ロシア空軍が我々の頭上にいて、想像できる限りのあらゆる武器で我々を攻撃しているのに、人道支援や交渉や外交努力について語るのは大きな皮肉だ。ホワイトハウスは何が起きているかを知っているはずと批判した」  ホワイトハウスにとって大事なものは、支持者達との約束だ。クリントン詣でする人間の半数以上に献金をさせているのだから、政治は商売なのだ。それもうんと儲かる商売なのだ。爆弾を作る会社の要求は呑むが、爆弾で体を引きちぎられる人間のことは考えない。地球上で生きている人間のおそらく99%は、この体を引きちぎられる側に属すると思うが、そんなまともな判断を下せないほど洗脳されているのか。まさか一庶民が権力を持っている奴等と同じ側に立っていると信じているのか。軍用ロボットと戦わされる哀れな奴隷でしかないことに気がつかないのか。  僕が生まれる少し前、この国は破綻した。近い将来、破綻と聞いて真っ先にこの国の風景が浮かぶようなことが、今の政治屋の破綻した脳から生まれるかもしれない。

「   」内引用