勢い

雨が降っていたので、今朝のウォーキングはいつものテニスコートではなく、手前の駐車場で行った。そこは瀬戸内市給食センターと中学校の体育館をかねているのでかなり広い。1周すればテニスコート2面はあると思う。テニスコートに足跡をつけるわけにもいかないし、自身の靴も汚れるので一挙両得だ。いや、今朝は一挙三得だった。
 駐車場からは僕の薬局は道路を挟んで目と鼻の先だ。そこを何周もしていたのだが、あるとき薬局に黒い小さな車が駐車しているのが見えた。まだ営業開始までには20分くらいある。気の毒だからウォーキングをやめ帰って車の中を覗き込んだ。その人物はもう何十年来の利用者で良く知っている人だからドアを開け「シャッターをすぐ開けるから」と告げたのだが、その瞬間タバコの臭いが鼻をついた。こんな狭い空間で吸っていたら一体どれだけの化学物質を吸い込むのだろうと恐ろしくなるような臭いだった。
 30年前くらいまでは僕も吸っていたら偉そうなことは言えないが、今はもう全く耐えられないものになってしまっている。その間彼は逆で楽しみ続けていた。そのせいで間質性肺炎になり余命半年といわれている・・・・と思っていたが、もうその話を聞いてから半年くらい経っている。そこで尋ねた。「〇〇さん、もう半年来たんじゃない?余命半年って言われてなかった?」「うん、言われたよ、半年か1年って」「結構差があるじゃない。それでもタバコをやめる気はないんじゃろう?」「当たり前よ」「タバコが美味しいの?」「美味しくなんかないよ。勢い、勢い」タバコを吸う理由が勢いと言うのは聞いた事がない。やめれない理由をそう表現したのだろうが、勢いで会社をやめ、勢いで若い女性と結婚し、勢いで死んでいくのだから、勢いよく転げ落ちた人生にはふさわしい。この期において躊躇うのは彼の美学には反するのだろう。