常套句

 朝一番のニュースで、大雪のために列車の中に閉じ込められて10数時間過ごしている光景が放映された。400人以上が列車に閉じ込められ、よりによって腰掛けられない人も多くいたみたいだ。雪で帰宅の足を奪われ、電車を選択した人が、集中し、いつも以上の混雑だったらしい。明かりがついている電車の中をテレビが映しているのだから、近くまで人は行くことが出来たのだろうが、側溝などが雪に埋もれて見えないから、電車から降ろすという選択肢はなかったみたいだ。それは頷けるが、頷けられないことがある。
 それは10数時間缶詰状態にされた人達の体力と気力のすごさだ。なるほど数人は救急で運ばれたらしいが、少なくともそれ以外の400数十人は耐え抜いたってことだろう。おまけに、放映されたニュースでは、窓などにもたれて立っている人が大勢見えた。腰掛けることも床に座り込むこともしないで10数時間立ちっぱなしの人もいたのではないか。
 学生時代、当時の新幹線は満員になることがしばしばだったが、デッキにギュウギュウ詰めにされて東京に行ったことがある。身動きできない状態は新幹線でもしばしばあった。若いとそんなことまで出来るのだ。今となっては考えられないが、この僕でも20歳の頃は出来た。恐らく学生が一杯乗っていただろうから、夜を立ったまま明かしたというつわものが多かったのではないか。状況を想像しただけでパニックを起こしそうだが、人間って、いざと言うときは強くなれるものだ。若い人はなおさらだ。想像を絶する強さなのだ。
 中島みゆきの歌に地上の星と言うのがあって、人は誰も輝いていると歌われているように記憶しているが。正に昨夜のようなことを歌っているのだと思う。じっと我慢して耐えた気持ちと体の強靭さにただただ感心する。
 当事者がこうむった被害や損失には同情するが、その忍耐力に多くの国民が勇気付けられたと思う。下手なスポーツの常套句をあの方々にささげたい。