万引

 今朝の毎日新聞の三面に大きく取り上げられていたニュースがある。県内版ではなく全国版だ。大見出しは「留学生を万引き集団に」と言うもので、小見出しは「ベトナムから指示」とあった。そしてその舞台になったのが岡山県内の日本語学校だ。恐らくその学校は僕がよく知っていて、胡散臭さに少しでも早く次女三女を抜け出せたかった学校だろう。事件はその学校だけでなく、ほとんど同じ穴の狢化している他の学校でも起きていることだと思う。しばしば目にするし耳にもするから。  大阪府警がドラッグストアなどで万引きをしていたベトナム人留学生7人を捕まえた。彼らはベトナム在住の女の指示で万引きをし、帰国する人間を運び屋にしていた。万引きした額は130万円と言うが、ベトナムでの価値は1000万円近くになるのではないか。学費や生活費を稼ぐためと言っているらしいが、そもそも勉強する気などほとんどの学生がもっていない。僕は次女三女が再入国したときに、その学校の寮に引越しの手伝いに行ったが、既に日本で学んでいた?青年達に知的な好奇心など何もないことを知った。それよりも週28時間と言うアルバイトの時間制限を越えて、働きまくっていた。仕事は新聞にも出ていたが深夜のコンビニ弁当作りだ。車に乗せられ、工場に行き徹夜で働いて朝帰る。その職場は日本語学校の斡旋で、グルだと言っていた。いわば学校を隠れ蓑した人材斡旋業なのだ。元々勉強などさせるつもりも無い。日本に来るにあたって、業者に信じられないくらいの金を払って、借金まみれでやってくるから、どんな過酷な仕事でも耐える。1年働いて元を返し、2年目からが自分の金になる。日本で稼げば向こうに持って帰れば相当な金額になるから大抵のことなら我慢する。  国内の日本語学校の学生は昨年ベトナム人が中国人を抜いて25000人でトップだ。日本語を話せる人材が求められているというが、ほとんど人間は悪徳業者の「日本に行けば金が稼げる」と言う口車に乗っている。学生が集まらない学校、深夜の弁当工場、現地の悪徳商法、この3つが揃って今の状況を作っている。このまま、「日本人が働かないから、貧しい国の人間を呼んで低賃金で働かせよう」などと、企業だけにとって都合の良いことを続けていると、きっと近い将来とんでもない社会的な混乱が起こる。良質な人間を呼ぶのならいいが、その国でも活躍できないような人間ばかりをかき集めて来ている。そうした人間が隣近所に、それこそ何千人単位で暮らす姿を想像できるだろうか。うまくやっていけるなどと幻想を抱いてはいけない。結束力が比べ物にならないくらい強い人たちに、個人主義の今の日本人が太刀打ちできるはずが無い。  次女三女が、現在のベトナムのことや日本での生活について赤裸々に語ってくれる。一緒に暮らし始めて、人間関係を粉飾する必要が無いことがわかったのだと思う。それによると、今ベトナムにいる友人に日本に来なさいなどと決して言えないそうだ。日本の構造的な汚さを見るにつけ、再来日したことを後悔する事もあるという。「私達は貧しいですから仕方ない」としばしば口に出すが、自分に言い聞かせているように見える。日本人がしたくない仕事をする羽目になった再来日を後悔している。母国ではもっともっとクリエイティブな仕事をしていたのに、今では金持ちと年寄りの世話だけだ。  それなりの知識や技術を持った青年が日本にやって来て、それなりの生産活動に励み、尊厳を持って暮らすことが出来る。日本人もそれらの人たちを恐怖せずに暮らすことが出来る。少なくとも、最低限この線を維持しなければ、何千年培ってきた共同体が破壊される。池の中でブラックバスに駆逐された在来種の運命を今度は日本の人間と言う動物が辿る。  日本人にも当然天地の差がある。それは致し方ない。ただ人為的にできることだから、少なくとも入国は天に近い人たちに絞るべきだ。あのひらかれたEUの人たちでも本音はアイヌと大和と沖縄の人たちだけの国を羨ましく思っているらしいから。  毎年恒例の京都旅行の度に感じる。アジアの人間達特有の喧騒、白人と日本人以外8割がアジアの人達かと言う割合、あの景色が自分の町だったら耐えられるのかと。