結婚式

 帰ってくるなり、三女が「オトウサン、今日私 日本の 悪いところ 見つけた」と驚きの顔で教えてくれた。  牛窓のホテルでアルバイトをさせてもらっているのだが、今日は結婚式で忙しかったらしい。まだアルバイトを始めたばかりで、結婚式の手伝いなどは出来なかったみたいだが、垣間見ることは出来たのだろう。「日本の人 クリスチャンでないのに、教会のような結婚式した」と言うのだ。「あの人 神父様でないでないですよ。どうして 神社で しないですか?」と問われた。  かの国はフランスの植民地だったせいで、立派な教会がたくさんあり、クリスチャンも多い。僕がかの国の人と深くかかわるようになったのは、教会に連れて行くようになってからだ。彼女達と行動をともにして、日本人の信者以上に生活の中に宗教が根付いていて、敬虔な信者が多いことに気がついた。だから次女は今日の結婚式がカトリックの結婚式でないことをすぐに見抜いたのだろう。「日本人は、外国の習慣を取り入れるのが得意だから、こんなことはよくあることなの」と答えたが納得できないらしくて「遊びでしょう?」と言った。遊びと言う言葉が彼女の気持ちを正確に表現出来ているのかどうか分からないが、さしずめ「違うだろう!」くらいなイメージか。  日本に来て、2つの学校に行き、いくつかのアルバイトをし、日本人と暮らす。僕の青春時代などとは比べ物にならないくらいの経験をしている。それを財産にこれから生きていくのだろうが、いずれ今来日中の多くの同胞とともに、おのおのの場所でリーダーになっていくのだろう。それを目撃することは僕には出来ないが、そうした姿を想像しながら一つ一つの疑問に答え、経験を積んでもらえるように心がけている。