音声入力

 今朝ある所を訪問した。訪問するや否や、必要事項を書かされた。と言うか打た?された。と言うのは、本来なら住所、氏名生年月日などアンケート用紙に書かされるが、そこは違った。言葉遣いが間違っているかもしれないが、アイパッド?を渡された。レポート用紙くらいの大きさの薄っぺらいパソコンみたいなものだ。なんとなく受け取ってしまったので、僕が使えない、触ったこともないことを伝えるタイミングを失った。ただ、毎日パソコンを使っているので、あながち使えないことはないだろうと思って、郵便番号から打ち込んでいった。始めてみると、ほとんどパソコンと同じだから結構旨く打てた。ところが何故か番地の数字が打てなくなった。どこかを操作すれば数字が現れるのだろうと思って、色々な印を押してみたがどうしても出来なかった。仕方なく受付の女性を呼んで番地だけ入れてもらった。  女性は心配して少しの間一緒に操作してくれたが、おおむね出来ると思ったのだろう、受付のカウンターに戻った。来所理由のところの画面で、日本語入力をしようとして色々な印を押しているうちに「音声入力」の画面が出てきた。僕は今まで音声入力できる機械に触れたことがなかったので、そして珍しく好奇心を刺激され、果敢に挑戦してみた。  「ボクガ キョウ ココニキタリユウハ ユウジンカラ ショウカイサレ ・・・・」どこにマイクがあるのか分からなかったから、よく聞き取れるように、ゆっくりとはっきりと声を出した。まるでロボット相手に喋っているように周りの人には聞こえたかもしれない。それが証拠に、近くにいた若い女性達が笑っていた。「ココヲオトズレテ スグニ キヅイタコトガアリマス・・・」アンケートに協力してあげようと思ったので、なるべく詳しく書いてあげようとした。ただ、喋っている言葉がいつ画面に現れるのか分からなかった。正しく日本語に転換出来るのか不安だったが、文字を打たなくて良い便利さは痛感した。面白いので、もっと気がついたことを書こうとした矢先、カウンターから身を乗り出してさっきの受付の女性が「お客様、それは音声入力できないんです」とばつが悪そうな顔をして教えてくれた。  ガチョーン!この数分間の出来事を文字化けして消してしまいたかった。