渋滞

 津山にある作楽神社で行われた祭りの和太鼓のイベントを聴きに行くために、片道2時間半を往復した。色々あって、結局は1人で聴きに行ったのだが、それはかの国の人たちに日本の文化を紹介するチャンスを1回失ったってことでもある。往復5時間は、結構疲れた。この数年、言葉は通じなくても、かしましい話し声の中で運転をしているから、眠気を催すこともなかったが、今日は久しぶりに睡魔に襲われて、敢えて途中で休憩を取った。  チャンスを失ったのは残念だったが、でも結局それは良かった。と言うのは帰り道、ふと気がつけば渋滞に巻き込まれていた。国道53号線は、岡山市と県北を結ぶ幹線道路だが、なにぶん何処の県でも同じだろうが、南北に走る道路は基本的には空いている。だから53号線で渋滞などとは考えもしない。だから最初に車が止まったときは信号待ちかと思った。その状態が結構続いたものだから、渋滞だと分かったが、それでも南北道路だからすぐに解消すると高をくくっていた。ところが、歩くのより遅いスピードをかなりの時間強いられた。挙句の果ては、警察官がある信号のところで車両を本来の道路とは別の方向に誘導した。わけもわからず指示に従ったが、幹線道路から逸れるときに前方から救急車が猛スピードで走ってきたから、自動車事故があったせいで渋滞を起こしているのだと分かったが、さて迂回道路が又渋滞で、運転していても気分が悪くなりそうだった。  それはそうだろう、誘導された道は、それこそ貴重な体験にもなったのだが、まるで牛窓みたいな港町に海岸沿いに延びる細いものだった。片側は山で、反対側は昔ながら商店が連なっていた。車がすれ違うのがやっとの道で、途中に津山線の駅もあったから、嘗ての町の中心部だったのだろう。今はその面影はなく、山の陰でひっそりと息を潜めている。瀬戸内の港町と、山間の町が嘗て同じ顔をしていたことが興味深かった。  本来の時間を30分は悠に越えて我が家にたどり着いた。車に弱い人が多いかの国の女性達を連れていたら、余分の苦痛を与えていたに違いない。諸般の事情で同行できなかったことが幸いした。