さりげなさ

 参った、そのさりげなさに負けた。  移転したホームセンターは、岡山からの帰り道、県道沿いにあるからその点は便利になったが、何せその分入りにくく出にくくなった。渋滞気味になるから警備員が交通整理を開店当初はしてくれたが、今日などすでに客数が減っているのか警備員はいなかった。だから出るのに苦労するだろうなと思っていたら、案の定出口で何台かが列を作っていた。田舎で運転をする人間にとっては、割り込みなんかは苦手で、いやする必要がないから、縁のないことで、こうした状況はすこぶる苦手なのだ。ところが僕が出口の先頭に立ったとき、道路に大きなスペースが空いていた。恐らく大手の運送会社のトラックだと思うが、僕が出やすいように止まって待っていてくれたのだ。僕はお礼の挨拶をしながら出たのだが、ちらっと見たら運転手は僕とは反対の方向を見ていた。視線を合わすことは出来なかったが、ひょっとしたらその後こちらを見てくれるかも知れないと思って、タイミングをずらして再度頭を大きく下げた。 僕も結構脇道から出てくる車に道を譲るタイプだが、この運転手さんは職業的に倫理観が備わっているのか、あるいは運転席が高いから状況を把握しやすいのか、僕など足元に及ばないほどの運転をその後もしていた。混雑する道路をその後10分くらい僕の後ろを付いてきたが、僕が譲る必要がないと判断したケースで2度彼は道を譲った。ああ、あのケースではああして譲るのかと、まるで教習所で運転を習っているようだった。そしてまだまだ駄目な自分が未熟に思えた。  渋滞した幹線道路に侵入するときに、道を譲って貰う嬉しさが田舎者だから余計分かる分、そのお返しを常に心がけているが、的確な状況判断が結構必要で、なかなか難しいこともある。それも経験だと思うが、的確性は別として、その気配りは恋人を選ぶとき、結婚を決めるとき、相手を簡単に見極めれる判断材料としては便利だと思う。