不正義

 僕の印象では「正義」を軽々しく口にする人間は、およそその概念から最も離れたところでうごめく人間が多いように感じる。本当に正義を実践している人が敢えて、それを口にするだろうか。もしそれを実践していたら敢えて口に出す必要もないし、そもそも気恥ずかしいのではないか。  このところ勇ましい言葉が飛び交うが、どっちもどっちのように聞こえてならない。特に特権に守られて何をしても何を言っても傷つかない立場にいる人間が言うのを聞くのは耐え難い。僕の印象ではそう言った綺麗ごとを口にするのは欧米の人間に多かったように思うのだが、今は東洋だろうが中東だろうがアフリカだろうが関係ないらしい。正義が氾濫して、まるで100円均一の店頭のようだ。  爆弾を身にまといスイッチを入れる。わが身が一瞬のうちに肉片となって飛び散る。それでどんな正義を得ようとするのだろう。遠くから爆弾を発射し、あたりの人間を焼き殺したり肉片にし吹き飛ばす。それでどんな正義を得ようとするのだろう。人間はたった数十年しか生きられないのに、そんな動物なのに、誰に他人を抹消する権利があるだろう。殺し殺される現場にいる白も黄色も黒も哀れだ。どうして、底辺の人間達が殺戮に駆り出される不正義に気がつかないのだろう。