的確

 さすが、プロフェッショナル、その的確なコメントに感心した。  フランスで墜落した飛行機のパイロットが故意に、山にぶつけたと言うことが分かって、フランスの検事が記者の質問に答えていた。その中の質問が「自殺をしたのか」と言うものだったが、それに対する検事の言葉が適格だった。僕ら素人には、沸いて出ない言葉だ。  「自殺と言うものは一人でするものだ。150人一緒に死んでいるのだから、私は自殺と言う言葉は使わない」およそこんな発言だったが、考え抜いた言葉でなく反射的に出た言葉だ。考え抜いても出そうにない言葉をいとも簡単に的確に出せるのだから、その道に精通している人の能力に感服する。  それにしても、人間って余り違わないんだと言う感想を抱く事件だ。アジアで行われた特攻隊みたいなことを中東の人たちがすることに驚いていたが。ヨーロッパの人でもするんだと思った。もっとも今回の事件は、人に強いられてやったのではなさそうだから、本質的には違うかもしれないが、岩肌に向かって高速でぶつかっていく恐怖を当人は克服していたのだろう。太平洋戦争中に航空機でぶつかったり、人間魚雷でぶつかったり、中東では爆弾を体に巻きつけて爆発させたり、考えただけでも恐怖で震えてしまいそうなことを出来る人たちが同じ時代にいると言うことが想像できない。宗教や正義は、命と引き換えに守るほど崇高なものなのだろうか。自分の体を飛び散る肉片に変えてまで守るべき対象なのだろうか。自分の存在を消してまで守るべきものなのだろうか。命じられるほうに正義があり、命じるほうに腐敗や悪意があるのではないか。合法と言う名で、戦時中の日本や現在の中東と全く同じことを先進国とやらもしているのではないか。  人の命をもてあそび、自分の命を永らえる。胡散臭さで地球が覆われている。