犬種

 どんな犬種が猟犬に適しているのか知らないから、名前を聞き逃してしまった。とにかく大きな犬だったらしい。捨てられ処分される犬を助けているNPOの人が、偶然牛窓で飼い主に名乗りをあげてくれた人のところに連れて行ったが、お見合いは不成立だったと教えてくれた。希望者のおうちに幼いお子さんがいて、まだ危険だと考えられたのだろうと言っていた。で、その時についでに教えてくれた話の内容が衝撃的だった。  この時期猟犬がたくさん捨てられるのだそうだ。素人にはその意味は分からなかった。猟の時期がすむからお役ごめん?などは素人でも想像出来るが、(実際どの時期が猟の時期かは知らない)正解は違っていた。老いた猟犬ではなく、その子供の若い猟犬を使うのだそうだ。だから親のほうを処分するらしくて、ひどい人間は猟銃で撃ち殺すらしい。猟犬を猟銃で撃ち殺すなんて洒落にもならないが、こういった人間をどう表現すればいいのだろう。  僕のことだから「そいつこそ撃ち殺したらいいんじゃないの」と言うと、相手も「そうですよ、撃ち殺してやりたいです」と怒りをあらわにしていた。僕みたいな部外者でも不愉快になるのだから、保護し世話をしているボランティアの人たちだったらいたたまれないだろう。それにしてもどの世界も不条理なことが多いなとつくづく思う。一部の人間の快楽や営利活動の後始末を、善良な市民が無償でするのだから。  その話を聞いた直後にやって来た夫婦にその話を早速披露した。小型犬を飼っているらしくて、朝の4時に必ず顔を引っかかれるらしい。それはコタツの火をつけてくれと言う合図らしい。コタツの火をつけてやるとそそくさと入るらしい。「あの馬鹿犬にはかなわんわ」と目を細くして教えてくれる姿こそ当たり前の人の姿ではないのか。当たり前ごときができなくてどうする。