外国人

 2時間くらい、「コレハ ドウデッカ?」の質問攻めだった。小さな字を読むためにその都度眼鏡を外すから、途中からは首こり肩こりで辛かった。ただ僕の一時の不調より彼女達の抱えている不安のほうが大きいからそんなことは言えない。集中を切らさないように丁寧に募集内容を吟味した。  あるホテルの喫茶コーナーで、コンビニでもらってきたと言うアルバイト情報誌を2冊テーブルの上に広げた。応募できそうな会社に印をつけていた。と言っても全ての漢字が読めるわけでなく、出てくる地名には疎いから、およそ可能性のないものまでひっかっかっていた。だから到底選択肢にもはいらないような募集先までチェックしなければならなかった。  2時間かけて2つくらいに絞ると「オトウサン カイシャニ デンワ シテクダサイ」と頼まれた。たどたどしい日本語では、用件が通じないかもしれないので、僕はすぐに引き受けたのだが、実は前日、僕は痛い教訓を得ていたのだ。と言うのは偶然漢方薬を取りに来た方が、勤めているスーパーで人手が足らなくて困っていると言う情報を教えてくれた。渡りに船とばかりにすぐに僕は電話をした。受け付けの方に電話をするとすぐに担当の方につないでくれたから、そして思いのほか丁寧な応対だったので、これはよほど人手が足りないんだと内心ほくそ笑んでいた。なのに、その時に言った僕の言葉がどうやら適切ではなかったらしいのだ。一瞬にして断られたから。そしてそのことを受話器を置いて傍にいた姪に話すと「怪しい、おじさんに思われたんではないですか?」と笑われた。  その経験でこれからは僕が電話で申し込むのではなく、姪にしてもらうことにした。ちなみに僕が人事担当の方に言った言葉は「若い女性が二人いるのですが、外国人でもいいですか?」だけだったのだが。