犬畜生

どんな道でも究めると、部外者には輝いて見える。 今日は行けないと薬剤師から連絡があった。その理由が、犬を保護したからだと言うのだ。保護すると言うくらいだから、放浪している犬を捕まえて自分の家につれて帰った・・・と素人なら考える。実際は・・・まさにそのとおりらしい。  まず、その犬が放浪していたかどうかを見極めるのが僕らには最初の難関だ。そのことを尋ねると、雰囲気で分かるとなんとも頼りない答が帰ってきた。しかしそれはひょっとしたら長年ボランティアをしていた人たちが積み上げた嗅覚で、一番の武器かもしれない。又首輪の傷み方、千切れ方で、その犬が家出したのか、置き去りにされたのかが分かり、毛並みの整い方で、どのような境遇にいたか、又、足の裏の肉球からも、どこで飼われていたかなどが推論できると教えてくれた。実際は、もっと教えてくれたのだが忘れてしまった。まるで探偵が事件を解明していくようなものだと思った。話の中の要所要所に飼い主に対する強い批判が覗くのは、捨てられた犬たちの保護を目的に作られたNPO法人で活動しているからだろうか。  この1週間で、癌の犬と、まだエイズを発症していない猫の漢方薬を尋ねられた。愛情あふれる飼い主から相談されたらしい。僕の漢方薬の知識が役立てるのか興味を持って眺めているが、人間と同じように大切にされる動物がいることは、人間そのものに対する評価があがる。なにしろ、最近目にしたり耳にしたりするのは、犬畜生にも劣る爬虫類レベルの連中ばかりだから。