切れ味

 こう言うのを切れ味というのだろうか、それとも開け味というのだろうか。  牛窓に帰り、薬局を手伝い始めてからずっと使っていた物だから相当の年数になる。紙に穴を開けるたびに、ある部分は切れているし、ある部分は切れていなくて、圧力がかかった証拠のような溝だけが出来ている。だからそのたびに指で押して穴にしなければならない。2度手間だけど、月に1回、処方箋の請求の時に使うくらいだから、不便承知で使い続けていた。  ある文房具を買いに行ったついでに穴開け機(商品には1穴パンチと書かれていた)を見つけたので、それといつものようにとても安いことに気がついたので(300円台だったと思う)買ってみた。30数年ぶりの買い換えとなったと思うのだが、大いにその価値を実感した。1回だけ穴を開ければすむことなのだが、何気なく昨日使って、そのなめらかな切れ味?開け味に驚いた。まるっきり抵抗がないのだ。今までなら、机の上に置いて体重をかけて開けていたのだが、それも数枚紙を重ねているものに穴を開けるだけのために、指に軽く力を入れるだけできれいな穴が開いた。たったこれだけのことだがその行為にストレスを全く感じることなく出来たことが嬉しかった。  どうも僕には倹約とけちが混在しているように思う。どちらが僕の中で優勢なのか自分でも分からない。まだ使える物の基準が人様と違うかもしれない。ただし、それはこの国の人達との比較であって、後進国の人達と比べれば僕の基準は恐らく犯罪的だろう。だから質素を貫き、その人達と同じ地平で語り合える環境を是非維持し続けたいと思う。そうしないと、僕が僕でなくなるような気がする。