発覚

 思わずBGMで「風の中のすばる砂の中の銀河みんな何処へ行った 見送られる・・・」と流そうと思った。あの独特のナレーションで「○○だった」などとやられたら、それなりの番組に仕上がるのではないか。感動した僕は、黙っていられずに娘やクミチャンに今し方の出来事をすぐに披露した。  市民病院の薬を作り始めて、同じ町内でも知らない人が僕の薬局を利用することが増えた。時に移動の手段が無くて薬局に寄ることが困難な人は、家まで薬を配達してあげるのだが、今日の出来事もその為に「発覚」したものだ。 僕以上に牛窓の地理に詳しくなった妻も、今日初めての処方箋の患者さんの家は想像が付かなかったみたいだ。地図を拡げて探し始めたとき、丁度いつもの集荷の為にクロネコヤマトの運転手さんが入ってきた。そこで妻が待ってましたとばかりに「○○町の○○さんのお家はどこら辺りなの?」と尋ねた。すると運転手さんは「○○さん?、番地は○○○○ですね。その家は・・・・」と教えてくれた。これには本当に驚いた。牛窓は田舎だけれどそれでも2000数百戸はある。まだまだ限界集落ではない。聞けばそのほとんどの番地を覚えていると言うのだ。僕にとっては考えられないことなので、驚きと賞賛の声をあげたのだが、彼曰く「もっと凄い人はいますよ。顔まで覚えていますから。どこどこに出かけていたことまで分かりますよ」だって。  こうなれば歩く、いや運転する個人情報だ。パソコンどころか頭脳に保存している。元々の能力か、日々の繰り返しで訓練されたのか分からないが、いずれにしても大した能力だ。日々何気なく接している人の中にもプロフェッショナルは一杯いる。メディアへの露出狂にうんざりさせられる毎日だが、巷のプロフェッショナルの秘めたパフォーマンスに感動した良き日だった。