金次第

 地獄の沙汰も金、いや芸術の沙汰も金次第って事か。  薬局をよく利用してくださる方が、この数年でめきめきと絵の実力を上げた。ほとんど絵に関しては鑑賞する能力もない僕だが、上手になったくらいなら分かる。最近は自分で描いた絵を写真にして2度楽しんでいる。それが高じて個展を開いたりしていて、知る人ぞ知る田舎の有名な芸術家になった。しばしばその作品を写真に撮ってくれ、薬局の中で小さな額縁に入れて皆さんにも見てもらっている。「ご主人が有名になったらこれが高く売れるのに」は写真を貰ったときの僕のお決まりの言葉だ。  今日、ある展覧会の案内状を貰った。70数名の方の絵を展示しているというのだ。会場は岡山県のその種のものが開かれるときには会場になる有名なところだ。「凄いではないですか、これでますます絵で食っていけますね」といつものように半分茶化しながら言うと、意外な実情を教えてくれた。  僕は展覧会などに出品すると、報酬がもらえるものと思っていた。ところが実際は絵を出す方がお金を払っているらしいのだ。言葉を変えれば、お金を払って展示して貰っているだけなのだそうだ。だからお金さえ払えば、あんな有名な場所でも展示してもらえるのだ。おまけに、絵画教室、道具代、カメラやその周辺機器などを入れると、毎年200万円ほどの出費になるらしい。  どうやら時間をもてあましている人達が、芸術という名で多くの出費をさせられている。もっともそれは悪いことではなく、精神にも肉体にも良い影響をもたらしているだろうからとやかく言うことではないが、ちゃんとその裏で経済が循環していることに驚いたし呆れた。  現代は全てが○○の沙汰も金次第になっていて、物事の価値を簡単に下げてしまっている。本来ならお金など簡単に超越してしまうようなものが、従属の立場に甘んじている。分かりやすくて味気ない、乾燥した時代だ。