逆流

 大病院で思うような結果が出なかったので僕の漢方薬を選択してくれる人が時にいる。光栄だが、嬉しいわけではない。現代医学で難しいものは漢方でも難しいのだ。まして大病院と縁を切って僕の漢方薬だけとなると背負うものが重すぎて、こちらも苦しくなる。ただその結果がよいことも当然あって、そう言ったときは安堵する。しかし僕は仮に上手く言ったときでも大病院と縁は切って欲しくないのだ。検査という大きな武器もあるし、いざというときの救命はこれ以上のプロフェッショナル集団はない。だからできれば僕の漢方薬は補助というポジションにいつもおいていて欲しいのが本音だ。 その逆もある。漢方薬で結構上手くいっていた人が突然来なくなると言うパターンだ。僕の漢方薬でイマイチ満足できない人が大病院にかかる、こんな流れなら寧ろ安堵するのだが、全く方向が違うだろうと言うものだ。得体の知れない健康食品とやらにいつの間にかシフトしている人が時にいる。得体の知れない、訳の分からないものほど、雄弁という魔術に長けているから、いつの間にか引きずり込まれるのだろう。もうそれは慣れっこになっているから今更と思うのだが、逆流して自滅していく人達を目撃すると、心が痛むし、道徳心の全くなくなった、お金だけが動機の国になったことを思い知らされずにはおられない。  謙遜で質素で、笑顔がこぼれ、思いやることが自然に出来る人達の中で仕事をしたい。