共犯者

 お世話になている税理士の先生がふとこぼした言葉が気になる。全く分野が違うから根拠は分からないが、何かその道のプロだからこそ感じるものがあるのだろう。 「首をくくらなければならない人が沢山出るんじゃないですか」と言った時の顔は、心配顔でもあったし自嘲気味でもあった。職業柄の無力感にも見える。  彼の憂いは恐らく経済面のことだと思う。何不自由なく育った気の小さい男が、弱さを隠すために吠えまくっているが、そいつのせいでいずれ多くの失意の底に沈められる人間が出ることを予想しているのだ。いい目をするのは奴と同じ階級に属する者ばかりで、それ以外のほとんどの普通の人は恐らく恩恵を被ることがないばかりか、それ以下の人達は、着ぐるみ剥がされ路傍に捨てられるだろう。経済など何も分からない僕だが、奴のそもそもを見ていれば容易に察しがつく。  本来手を差し伸べられなければならないところを切り捨て、何の手助けも必要ないところを優遇する。こんなことは最初から簡単に想像できていたことだが、何を期待してか、いやいやその前の悪よりまだましだと思ったのか、生き返らせてしまった。何かしらの餌で釣られた代償はいずれ近い内にやってくる。それが放射能だったり、首をくくる人の増加だったりしたら、国中が共犯者で溢れることになる。