環境問題

 「どうやって直すか分からないものを、壊し続けるのはもう止めてください、あなたたちは知らないでしょう」と12歳の少女が地球サミットで訴えたのが20年以上前。各国の参加者にその気はないから、ろくに聞いてもいなかっただろう。少女は、オゾン層に空いた穴をどうふさぐか、絶滅した動物をどう生き返らせるか、砂漠となった場所にどうやって森を生き返らせるか問うたのだ。普通ならその問いに答えられないことを恥じるだろうが、疫人にそんな倫理観はない。  いみじくも同じ年に、ある大企業の経営者が「日本経済は強いものだけが評価され、品格が顧みられていない。強さだけでなく、謙虚さ、倫理にどれだけ重きを置くか問われている」と毎日新聞に投稿した。  20年前からなんら進歩していないどころか、ますます疫人も忌業家も倫理から遠ざかっている。何十万人もの土地を奪い、何千万人もの空気を奪ってなんらお咎めを問わない疫人と、ますます庶民を馬鹿にしてのうのうと企業活動をする犯罪者が結託し、生かさず殺さずの封建時代そのままの権力構造を謳歌している。最低限のものしか与えられていないのに、貧乏人が大企業の経営者と同じ人間を支持する。アメリカで白人の貧乏人が、白人の超大金持ちを支持しているのと似たり寄ったりの構図だ。疑似体験さえしたことがない境遇などお互い分かるはずがないのに、それが結びつく。赤子の手をひねられていることに気がつかない。  20年前の少女は長じて環境問題のスペシャリストになっているみたいだ。こうした強い信念を持っている人はこの国にはなかなか出現しない。権力に擦り寄りおこぼれちょうだいの人間ばかりが目に付く。疫人とアホコミによってとことん飼い慣らされた人間ばかりが目に付く。