異質

 「昨夜の雨にはびっくりしたなあ」と出し抜けに言われたので、そのほうにびっくりしたが、実は僕も同じような印象を早朝受けていた。と言うのは、昨夜いつものようにウォーキングをしていた時には、月が空一面を照らしていて、南のほうにあった雲が白く見えるほどだった。星は高く、いつものように飛行機が星になって東西にいくつも通り過ぎていくのが見えた。  ところが、今朝は雨の音で目が覚めた。どうしてと、まどろみの中で考えた。そんなに懸命に天気予報を意識して見ることはないが、無意識のうちにでも雨かどうかなどは判断していると思う。不意打ちに感じたのは、恐らくその可能性を示唆するような文言が天気予報の中で使われなかったからだと思う。「出し抜けの男性」は僕よりふた回りくらいお年の人で、農業を営んでいる人だから天気には敏感だし、天気予報なんかなくても身につけた勘で天気などそれこそ予報できる人だ。その人がまるで不意打ちを食らったように言ったのだからよほどのことだったのだろう。  どちらかと言うと共通点を探すのが困難なような二人の人間が、どうでもいいような些細なことで、まったく同じような印象を持っていたことが興味深かった。牛窓でくくるのか、岡山県でくくるのか、日本でくくるのか、亜細亜でくくるのか、それとも種でくくるのか分からないが、「同じようなもの」に警戒心を解除する。  誰かが得するために大量の異質を受け入れようとしている。異質が異質で終われば、この国は混乱する。ほんの一握りの人間のために、圧倒的多数が生きづらさを感じる。そんなことお構いなしに上手い汁は茶碗を満たす。異質を上質に変える努力もせずに野に放てば、僕らはアフリカのサバンナで暮らすことになる。