極端

 「皆さんもしてみえると思いますが、煎じ薬を花の鉢におくと弱った苗が本当に元気になります。貰ったさし木のバラに、つぼみが出てきましたし、夏枯れしそうになったゼラニウムがオレンジの花を付け始めました。またできるだけ部屋をきれいにして、この冬を乗り切りたいと思います。」  僕より少し若い方だと思うが、その方に頂いたメールの一部だ。このメールを読んですぐ浮かんだ言葉が「愛でる」という単語だ。普段使ったことがない言葉だが、何故か頭に浮かんだ。この言葉はもちろんそうだが、その方の書いて下さっている文章で表現された情景は恥ずかしながら僕の生活の中には一切ない。    僕はバラは分かるが、ゼラニウムと言うのは分からない。語感から放射性物質の名前のようだが、勿論そんなものではなく綺麗な花なのだろう。その方の庭に咲くのか、ベランダに咲くのか、部屋の中に咲くのか分からないが、まさにまだ見ぬ女性が愛おしそうに花たちを愛でている光景が目に浮かぶのだ。 学生時代は遊び一色。田舎に帰ってからは仕事のみ。どうも僕には極端しかなく、ほどほどというのが欠けている。勉強も遊びも仕事も趣味も、どれも全開か怠惰の極みかのどちらかだ。気力体力が衰えていくこれからもそんな極端が出来るのかどうか分からないが、怠惰の極みを全開にすることだけは避けたいと思う。