違法

 お互い納得しているのだから、違法ではないだろう。調剤薬局としては正しくないかもしれないが、町の薬局としては許されるのではないかと思う。 ある人が、処方せんを持って来た。安定剤と睡眠薬が処方されていた。最近よく来る方だから状況は十分理解していた。ある事情で少し精神的に参っているが、病院にかかるほどではないと思っていた。ところがお子さんについていった病院で偶然診察を受けてみたら、うつ病と言われ上記の薬が処方された。門前薬局があるからそこで薬をもらって飲めばいいのだろうが、本人も家族も僕の所に来て相談してから薬を飲もうと決めたらしい。 睡眠は一気に5時間くらい寝て、そのあと目は覚めるが又眠りに入れるから僕は問題ないと思っている。どの様に医師に症状を説明したのか知らないがそれで睡眠薬はないだろう。僕とはよく喋るしよく笑う。確かに問題は抱えているが、食事はよく食べれるしお子さんの世話も充分すぎるくらい出来ている。ウツウツと家庭ではするだろうがウツには思えない。そんな話の後で、「じゃあ安定剤と睡眠薬を飲んでください。癖にはならないから安心して飲んでください」などとは口が裂けても言えない。結局処方せんは持って帰ってもらった。何日か有効期間があるから、どうしても飲みたかったら作ってあげると約束して。  安易に薬を作って渡せばそれだけでコンビニの店員が2時間働いたくらいの収入を得ることは出来る。でも後ろめたさを感じながらの収入には抵抗がある。肩書きとしてはそうするべきだったのかもしれないが、住人としては抵抗がある。誰かが悩みを聞いてくれるだけでスッキリとした気持ちになれるのに、孤立して奮闘する人が多すぎる。薬で何もかも解決できるはずがない。経済が仲介しない関係の希薄こそが病巣だ。  つけられた病名に打ちひしがれていたが、子供を連れて帰る姿は「母は強し」そのものだった。