しきたり

 車で10分も走ればそこはもう岡山市なのだが、ほんぶしんと言う巨大な宗教施設がある。山の中腹から平地まで、まるでお城のようだ。天理教の分派だとか言われているが詳しくは知らない。   今日そこの敷地の前を通った時、これ又広大な駐車場の草刈りをしていた。二人ずつ3班に分かれてやっていたが、一人は草刈り機を操作し、もう一人がベニヤ板を水平に持ち、機械で刈った草が県道に飛び散らないようにしていた。すなわち敷地の方にだけ刈った草が飛ぶようにしていたのだ。僕はその気配りに感心した。初めて見る光景だったからかもしれないが、簡単にして効果のある方法だとも思った。そしてそうした方法を考え実行しているのが一体どういう人なのかにとても関心が湧いた。すなわち、信仰をしている人達の気付きか、それとも全国でごく当たり前にやられている業者の知恵なのか、どちらなのだろうと思ったのだ。前者なら信仰の価値を感じるし、後者なら、その業界の新しい「しきたり」を感じる。  もうこの世からなくしていいしきたりも多くて、日々自然淘汰されているが、新たに生まれるしきたりもあるだろう。数の上では恐らく消え去る方が多いと思うが、必要に迫られて生まれるものもある。道徳とか信仰とか倫理とか、まるで生産に貢献しない物の価値は下がり続けているが、生まれ出ずる新しい価値もある。地下足袋に作業着の男達のしきたりがとても斬新に思えた。