巡り合わせ

 妙な巡り合わせだ。田舎は2年ずつ持ち回りで近隣の10軒くらいで作った町内会の世話をするのだが、前回役を引き受けていたときも、そのお家の葬式の世話をした。今日20何年ぶりかに又そのお宅の葬式を世話することになった。前回は奥さん、今回はご主人だから、ご主人は奥さんが亡くなられてずいぶんと長生きされたことになる。酒が好きで部落の集まりでは必ず一席ぶっていたが、他の人が敬遠する割には僕はそのご主人の一席が好きだった。酒の力を借りなければならなかったが、結構真実を突いているところも多く、都会で働いていただけあって知識も豊富だった。一席はいつも一石を投じていたように若い僕には見えた。その憎めない武勇伝が好きで僕はみんなの前でそのご主人を茶化して、封建的な町で彼が浮いてしまわないように気を配ったものだ。 それら全てが想い出の向こうに消えていく。なんでもなかったように朝になれば烏はゴミをあさるし、なんでもなかったかのように中学生は自転車で学校に急ぐ。大宇宙や悠久の時間の流れから言えば、僕らの存在など無いに等しいのかもしれない。所詮その程度で喜んだり悲しんだりして塵に帰る。