赤穂第二弾

 赤穂第二弾。  昨日赤穂について書いたら、偶然赤穂から漢方の相談に御夫婦がやって来た。僕だと1時間くらいかかるが、慣れた人ならもう少し早く来れるかもしれない。今日で3回目だから、相談が終わったところで雑談タイムだ。  僕が赤穂が好きな理由のほとんどは、ハーモニーホールと言う立派な文化施設があるからだ。奥さんもその施設はありがたいと言っていた。小都市でも結構有名なアーチストがやってくるから市民の評価も高いのだろう。ただその奥さんは、赤穂は食べるものがまずいと言っていた。確かに僕も、かの国の女性たちを連れて行っても昼食には苦労した。ただ、僕の苦労とその女性の苦労は質が違う。奥さんは話によると神戸で育って赤穂に嫁いだ人だ。だから舌はあくまで神戸だ。そもそも基準が高すぎる。あれだけの大都会だと、超有名店がひしめくだろうから、体重別の試合でもしなければ勝負は最初から決まっている。腕に自信がある料理人は人口密集地に出るだろう。その選択肢がない料理人が小都市で開業する。腕も店構えも当然劣る。ところが僕の場合、そもそもの基準が極端に低いから、そう牛窓基準だから、美味しいかどうかはさほど問題にならない。ただ入りやすくて出やすければいいのだ。清潔であればいい。無防備に入っていけれる店が少なかったような気がする。   そんな都会育ちの奥さんでも、最近は東のほうには行きたくないと言っていた。「ごちゃごちゃ」と言う表現を使って、大都市神戸を表現した。赤穂の人間になったと言っていたが、そうなると嘗て、「ちょっと用事で神戸まで行ってくるわ」レベルのことが億劫になるらしい。  その代わりかどうかしらないが、最近は岡山県、特に倉敷にはまっているらしい。もう何度もご主人と訪れたらしい。あの落ち着いた町並みが好きらしい。そこで僕がこの日曜日に訪れた尾道の印象を話した。倉敷の風情が好きだったら、まず尾道も気に入る。同じように落ち着いた町だし、風情を楽しめる範囲が倉敷よりも広い。じっくり楽しもうと思えば2時間では足りない。奥さんは最初から興味深く聞いていたが、途中からご主人のほうも興味を持ったのか、所要時間などを尋ねられた。  僕が訪れたらいいところを紹介するなんて10年前までなら考えられないことだ。漢方薬の勉強会のために色んな開催地を訪れたが、勉強が終わればすぐ新幹線に乗って帰っていた。勉強以外のことがまるでもったいないことのように思えていた。ところが今になって初めて理解できたのだ。そのもったいないようなことは営利活動には全く寄与しないが、人として生きるうえで必要な精神状態を整えてくれるってことを。そのことにもっと早く気が付けばよかった。もったいない。