警鐘

 ノーカットというふれ込みが面白くて何の先入観なしにそのインタビューを見た。インターネットだけで見られたのか、それともテレビでも見られたのか知らないが、途中1、2度、吹き出すほど面白かった。 総じて痛快だった。報道陣に媚びることもなく、まして小心を隠すために大都会で君臨しているが如く振る舞う余命がしれている老人をこき下ろすところは、他の誰も出来なかったことだ。秘めた正義感か、失うものが少ないせいか、この国を危うくしているもの、巣くうものにたいしての痛烈なあの姿勢の悪さがなんとも言えない。  恩師が彼の受賞を喜んでいると記者が述べると「それは嘘でしょう、学校では先生に嫌われていたから」の下りに至っては、正直とか事実とか、もう一度それらを大切にしろよって言う逆説のように思えた。体勢になびいて、無意識のうちにありとあらゆる不条理に荷担してきたこの国の人達に対する警鐘のようにも見えた。どうせマスコミは商品にしようと色々な都合の良い色を付けるだろうが、あの映像のスタンスを維持して欲しい。多くのそれらしき人達が、あっという間にその通りに変身していったのを見ているから、期待するほど無邪気ではないのだが。  力を持っている奴にすり寄らないことさえ心がければ、判断に迷うことは少ない。心卑しく生きていくことさえ避ければ、人を傷つけることも少ない。多くのものを求めなければ、自由に生きれる。人を利用しなければ人生は楽しい。誰に教わったものではないが、逆でなくて良かった。恐怖の余り、生えてもいない牙を剥き、吠え続けなければならない人生なんて馬鹿らしい。