食い逃げ

 そうかやっぱりな。「さしあたって健康被害はない」とあの頃言い続けていた男は、結局東電から金をもらっていたんだ。だから、危ないなんて口が裂けても言えなかったのだ。分かりやすいものだ。ほとんどの行政がこの種の範疇から出ないだろうから、単純明快に政治的事象は理解できる。  あるジャーナリストが、政府とマスコミと財界が手を組んだとき、実現できなかったものは何もないと言っていたが、原子力発電などその典型だ。僕は、何十年間それに関わった人達の健康で長生きを心から願っている。原子力発電所を促進した政治家、地方の首長、議員。それに御用学者、広告料に目がくらんで無批判を通したマスコミ関係者。みんな、みんな、これからも是非身体に気をつけて長生きしていてもらいたい。いつか、司法が正義に目覚めて、純朴な住民の土地や仕事を奪い、数年後に出てくるだろう健康被害をもたらしたそれらの人達を、罪に問う日まで、ずっとずっと元気でいてもらいたい。 日曜日の午後、時間潰しの大型店舗の中には疲れた生活人のありふれた営みがあった。恐らく僕を筆頭に輝きなどはない。どこか仮面のように無表情で、生活以上でもないし、生活以下でもない。人を人とも思わないとんでもない奴に、面白半分に何かを託してみようかと悪のりしたオモロイ街もあるが、それがどんなしっぺ返しを食うか想像もしない。そんな悪のりによその街で暮らす人間が付き合わされたらたまらない。原子力発電と同じしっぺ返し(弱い者が犠牲になる)が待っている。それに荷担した人達も、どうかどうか長生きして欲しい。捕まらない食い逃げは許されない。