基準

 WHOから発表されたうつ病の診断基準によれば、①抑うつ気分(落ち込む)②何に対しても面白みや喜びを感じない③疲れやすい、活力の低下④集中力、注意力の低下⑤自信喪失、劣等感を感じる⑥自責の念⑦悲観的になる⑧自殺志向⑨睡眠障害(不眠、過眠)⑩食欲不振⑪体重減少⑫疲労倦怠⑬頭重、頭痛⑭めまい⑮性欲減退などの症状が現れるらしい。  なるほど分かった。医師の前でこの様な苦痛を訴えればうつ病と診断され、尋ねられてもないと答えれば正常で帰ってこれるのだ。ところが僕なんか正直だから尋ねられなくても自分で白状しそうだ。仮に尋ねられたら全部ありますと一言で答えられる。典型的なうつ病でしっかりと薬による管理をして貰えそうだ。そして全ての症状がなくなるとはとても思えないから、一生薬から離れられそうにもない。下手をすると僕は製薬会社の上お得意になりそうだ。  運のいいことに全ての症状を持っているのに、僕自身に病気の意識がない。症状があっても何ら困っていないのだ。寧ろ今の僕の生活には全て必要なような気がする。それらがあるからこそ今人の役に立てているように思う。もしそんな症状がなくて幸せ一杯なら、僕は単に薬売りになっていただろう。  日本人の本来的な美徳はほとんど躁症状の人間によって破壊されている。黄色人種が白色になりたがって、壊してきた。アクセルばかりの人間がちやほやされて、ブレーキには見向きもしなかった。アクセルがこの国の情緒を壊し、昨年は国土そのものも破壊した。誰も断罪されないことをいいことに、又アクセルを踏み込もうと隙をうかがっている。彼らが鬱症状の一つでも備えていれば、何処かで自責の念や悲観論でブレーキに足をかけれただろうに。  基準からはみ出せば病気なら、いくらでも病人なんて作れる。基準を作る人間が製薬会社とつるんでいることなんか簡単に想像できるのだから、科学と正義は全く無関係なのだ。病識のない日常こそ泥臭く目指すべきだ。