新型うつ病

 毎月送られてくる薬学雑誌の今月号の特集はうつ病についてだった。最近の傾向についての考察が面白かったので披露する。

 定型うつ病(以前から言われているうつ病)は、気分が落ち込み、楽しめなくなる、食欲低下、不眠、外出をしなくなるなど、その症状はすべてマイナス傾向にあらわれる。また、真面目で几帳面、トラブルを恐れるあまり他人に気を使いすぎて精神的に疲れてしまう性格が特徴的。片や新型うつ病は、以下のような5つの特徴を持っている。 ①自分の好きな仕事や趣味・旅行などの時だけ元気になる ②定型うつ病の患者は他人にうつ病を隠す傾向があるが、新型うつ病の方は、うつ病を公言する傾向がある。また、病気を水戸黄門の印籠のように使う。「この紋所(うつ病)が目に入らぬか!」 ③家庭内でわめきちらかしたり、急に泣き出す感情の浮き沈みが激しい。何事も悲観的にとらえるため、些細なことで家族や友人に避けられたりとか、嫌われていると思い込んで傷つく。 ④倦怠感や疲労感などの不調を伴い過眠になる。とくに仕事のある朝、疲労感や倦怠感がひどく、憂うつな気分。 そのため、なかなか布団からでることができず、「行きたくない!」とか「ダメだ。行けない!」など悶々と考え続けギリギリまで動けない。いくら寝ても眠れてしまうといった過眠傾向がある。 ⑤女性は生理前にうつ症状が悪化する。

抗ウツ薬はほとんど効果が無い。主治医を信頼せずに良好な関係が築けない。    正式名称ではないらしいが、何となく新型といえば、新人類がかかりそうな病だ。ただ、抗ウツ薬が効かないとなると、むしろウツと言う言葉を使わないほうがいいのではないかと思ったりする。なるほど上司は怠け者の烙印を押して責めるから、そういった病名をつけてあげて守ることは必要かもしれない。素人には病的なのか、単なる横着なのか分からないから、人格を否定してしまい傷つけることもありうる。  僕は以前からうつ病と言う言葉があまり好きではなく、と言うのは抗ウツ薬を飲んでいる人が結構多くて、何となく治療成績が低いことが気になっていた。素人だから、処方箋を持ってやって来る人を判断できないが、本当にこの薬が必要なのだろうかと思いながら、投薬していた。  もう随分前から、世の中では当然うつ病と診断されているような方が漢方薬を希望してくるようになった。そうした方と話をしていて、僕のギャグで笑う人を「ウツウツ」と名づけた。ウツを2回繰り返せば、深刻さが消え、誰にでも起こる単なる落ち込みや動揺と捉える事が出来るようになった。また僕のギャグにニコリとも反応しない人を、定型うつ病だと思うようになった。随分乱暴な根拠だが間違っていないと思う。笑える人は漢方薬で復活する人が多い。笑えない人は僕の力では無理だからお医者さんにかかってもらう。  正義を行う人がとても少なくなった時代は、まじめで几帳面な人は生きづらい。そうした人が責任を是が非でも果たそうと頑張り、その結果自分をいたわることを忘れて自滅する。そうした人たちを踏み台にして私欲を満たす奴らが国を動かす。傷つかなくてもいい人たちが傷つき、傷つくのが当然の人間が栄える。この理不尽を逆転させなければ、僕らは新型うつ病になって身を守るしかなくなる。