覇気

 若い人が仕事についたと報告してくれるのは嬉しいが、若くない人が同じような報告をしてくれるのも嬉しい。もう立派に老人の域に達した人が、元気になったからと言って仕事に復帰したり、乞われて新しい仕事についたりすることがある。こういった現場に立ち会えるのは嬉しい限りだ。 社会との接点が能動的に復活すると、色々な変化が生まれるみたいだ。自然とこちらに伝わってくるものも多い。一言で言うと覇気が出てくる。それは言葉遣いや立ち居振る舞いに出ることもあるし、もっと簡単には服装に出てくることもある。仕事の為の服装は別として、ハッと驚くような色鮮やかな服装で来たりすることがある。内面の現れだ。どの年齢でも責任を持ち、やりがいを持ち、頼りにされ、結果を評価されることは心地いいのだ。その心地よさを年齢や体調で奪われたら、とたんに覇気を失う。何でも生産に関わっていることは大切だ。与えられることより与える方がはるかに心地よいに決まっている。与えられることは誰だって出来るが、与えることはいくつもの要因をクリアしてからでないと出来ないのだから。  多彩な趣味を持っている人とか、立派な肩書きから抜けられない人は別として、ごく普通の人達にとって、労働で社会と繋がっていることの心や肉体のいわばセーフティーネットはこの仕事をしていたら否が応にも感じることが出来る。言い方を変えれば簡単に元気になれる方法だってことだ。勿論耐えられる範囲でと言う条件は付くが、それさえクリアすれば最高の薬になる。どんな人だって何かしらの能力を持っていて、それで長い間社会に貢献してきたのだと気づかされることが多い。普通の人が愛おしく見える瞬間だ。そんな機会を多く与えられている自分の職業的な環境をありがたいと思っている。だって、ワル以外はみんな良い目で見ることが出来るのだから。  薬局にやってくる人達を見ているだけで救われる日々だ。