総社市

 なんとも皮肉なことだ。今日総社市のある所に映画を見に行ったのだが、グーグルマップで詳細に調べて自信満々で行ったのに、ほとんど1時間探し続けた。その場所は市民文化センターの近くだ。その市民文化センターは過去2度行ったことがあるからそこまでは自信があった。いやそこからほど近い会場も余裕で探すことが出来ると思っていた。冒頭で述べた皮肉とは、まず最初の目標にして行った市民文化センターに僕が追っかけている備中温羅太鼓のいつもの大きな車が横付けにされていたことだ。恐らく今日が年に一度のコンサートの日なのだ。今年も案内が来ていたが、何となく訪ねることに疲労感を感じて申し込まなかった。なんと僕はその会場に時間も体力も余裕を持ってたどり着いているのだ。初めて山陽自動車道を使って行ったのだが70分で着いてしまった。およそ2時間をみていたのに。こんなことならチケットを購入しておけば良かったと悔やむことしきり。映画は午前中だし、コンサートは午後2時頃だから両方楽しめたのに。 なんとも皮肉なものだ。新聞に記事として大きく載っていたから、その辺りに行けば誰もが知っているのかと思ったら、20人くらい通りすがりの人に尋ねても誰も知らなかった。1時間近く歩き回っていたから、同じ人に2組尋ねてしまった。その二人は哀れに思ったのか2回目に会ったときは一緒に捜してくれた。小さな子連れの若いお母さんは、自転車を押しながら「さっき気がつかなかったんですが、新聞に載っていた月というような名前の店があるから連れていってあげます」と一緒に歩いてくれた。そして連れていってくれたのがスナック「ムーン」という店の前だった。親切は本当に有り難かった。でも僕が日曜日の朝10時からスナックに行くような男には見えないだろう・・・いや見えたのかな。繰り返し言うが、親切は本当に有り難かった。僕は新聞の切れ端を若いお母さんに見せた。「スタジオブーンです。スナックムーンではないんです」もう一度言うが親切は本当に有り難かった。  恐らくすぐ傍にいながら近所の人に全く認知されていないことに不安を覚えた。訪ねていくほどのものではないのかと思った。せっかく遠路はるばる来たのだから総社の町を見ておこうと歩き始めたら、クロネコヤマトの店舗があった。毎日漢方薬の発送でお世話になっている会社だから親近感を持っているし、プロ中のプロだから事務所で尋ねてみた。なんとここでも分からなかったが、事務所から運転手に電話を入れてくれて、運転手さんが遠隔で教えてくれた。僕が探していた場所からは100メートルくらい離れていただけだ。それでも尋ねた人全員が知らなかった。  上関原発に反対している祝島の漁師達の生活ぶりを追い続けた映画だったのだが、生活に根ざした素朴な抵抗を上映する場所が、町から遊離していては意味がない。同じ地平で暮らし地域に認められていなければ、何か特別なこと、特別な場所、特別な人で片づけられてしまう。発信力が落ちてしまうのはもったいない。恐らく多くの意味がある活動をしている人達なのだろうから、日常をまとい「特別」を回避して欲しい。 カーナビは勿論携帯電話も持っていない。おまけに公衆電話など全く見かけなかった。グーグルと人の親切さえあれば簡単にたどり着けると思ったが、それだけではたどり着くのが難しいところもあるものだ。ひつこく繰り返すが、若いお母さんの親切は本当に有り難かった。そこまで僕の品も落ちたか!