焼き芋

 欲しければ口に出して言ってみるものだ。思いがけないプレゼントが届くことがある。こんな書き出しだと僕にどんな幸運がもたらされたのだろうかと思うが、届いたのは焼き芋だ。大きいのが3つまだ熱いまま届けられた。 日曜日に時間つぶしでうろうろしていたスーパーの中で、石焼き芋が売られているのに気がついた。何仕掛けか知らないが、敷き詰めた石の上に紙袋に入れられた焼き芋が並んでいた。触ってみなかったから熱いかどうかは分からなかったが、出来たて云々と書かれていたから恐らく熱々の焼き芋なのだろう。煙も出ずに香りもしなかったので石の下で火が炊かれているようには見えなかったが、芋に焦げ目は付いていた。1個200円なり。帰りの車の中で食べれば美味しいだろうなと思って、何回か前を通って手を伸ばしかけたのだが、最終的に躊躇ったのはそれが何処でとれた芋か書いていなかったからだ。後学のために目利きの主婦の如く肉や魚や野菜や果物の産地をかなり詳しく点検してみたが、おおむね西日本や外国のもので占められていたが、中には渦中の県のものもあり、どうしてそれらが西日本の店頭に並べられているのか理解に苦しんだ。例えば薬局関係では、ほとんどの人が口にすることのない「十薬(どくだみ)」でさえ、長野県産のものは市場に出回らないように規制しているのに、好きな人は毎日でも口にしそうなサラダの材料になる野菜が並んでいるなんて。  繊維質に富み、自然の甘みが摂れる焼き芋を食べることが出来なかった無念さを翌日店頭で話していたら、ある方が冒頭で書いたように早速持ってきてくれた。農家の方で自分の畑でとれたサツマイモを焼いてきてくれたのだ。うちのは甘くて美味しいよと自信に溢れたコメントと共に届けてくれたのだが、本当にその通りだった。石焼き芋ならぬ、電子レンジ焼き芋だそうだが、そんなに負けてはいないだろう。それよりも無機質にレジに並んで手に入れるより、心を添えて頂いた芋に値打ちがある。例えそれが同情から出た行為でも有り難い。  今度は大トロを買いそびれたと言いふらしてみようか。