除染

 ほらほら本丸に近づいてきた。さて大東京に住む政治家や役人のお偉いかた、大企業の社長さんらどうする。遠く田舎の出来事で、東北の忍耐強い気性に助けられて何ら痛みを感じることがなかった加害者達も、これで等しく子や孫が放射線に晒されることになる。 さしあたって健康被害はないなどと、ほとんど殺人に近いことを言っていた奴も、日常的にすれ違う人達の恨みを買うことになる。ヒ素の保管場所を勘違いしただけで命を絶った大学の先生の潔癖さの一欠片でも持ち合わせていたら今生きてなんかおれない奴らの傍を、鬱積した恨みで心がはち切れそうな人間達が通る。  3月11日以前の100倍の放射線が大東京に存在する。時速60Kmで走っていた車が、時速6000Kmで走る異常、数学のテストで40点しかとれなかった僕が4000点をとる異常、視力が0.3の僕が視力30も見える異常。こう考えてみればいかにあり得ない世界で生きなければならないことかが分かる。 除染除染で日が暮れる。何か高圧水を吹きかければ綺麗になると、元通りになると思っているのか思わせているのか知らないが、やたら水をかけまくっている。除染なるものをしてもやま3割が何処かへ流れていくだけで、その水が流れてきたところはたまらない。除染とやらで放射性物質が単に場所を変えただけだ。煮ても焼いても何をしてもなくならないものが、自身で滅び行く半減期を待たずに無くすることが出来るはずがない。いつ誰が考えた言葉か知らないが、悪意の潜んだ便利な言葉だ。誰かが「移染」と言うべきだと言っていたが、まさにその通りだ。言葉は正しく使わなければ。  忍耐が苦手な大東京の人がどういった行動をとるのが楽しみだ。耐え上手で表現の下手な田舎の人と心を通わせてくれることを祈る。