同じ中国地方と言っても、山陽と山陰ではまるっきり風土が異なる。例えば今日のトップニュースで繰り返されていたように、山陰が大雪で1000台の車が19kmに渡り立ち往生していると言われても、山陽は見事な朝陽が顔をのぞかせた。まさに名前の通り、陽と陰なのだ。  しかし、さすがに今回の寒波は特別で、山陽でも冷え込みはきつかった。だから折角の休みでもあるし、ずいぶんと遅い時間にいつものテニスコートの周回ウォーキングに出かけた。山陰の不安な車内での缶詰状態をよそに、一昨日降った雨がまだテニスコートに残っていたらしくて、それがあちこちで凍っていて、まだらなスケートリンクのようになっているのを季節の贈り物のように感じた。遠目にはまだ水たまりがあるから歩くのを遠慮しようかなと思案しながら近づいたのだが、目の前に立ちそれが凍り付いているのが分かったのだ。最初はいつものようにテニスコートのフェンス沿いに歩いていたのだが、何となくその氷が気になった。あまりの寒さに、通りすがる人もいなかったので、氷の上に乗ってみた。ベリ、ベリと氷が破れる音がするが割れはしなかった。人が乗れば当然割れてしまうのかと思ったが、意外と厚かったのか割れなかった。ただ下の砂に氷を押しつけるためか、べりべりという音は何処の水たまりでもした。ただすでに朝陽が当たっているところはそのベリベリで、まだ日に当たらない部分は音もしなかった。  昔子供達をスケートに連れて行ったことがあるが、すぐに滑ることが出来た子供とは違って僕はスケート靴で最初から最後までほとんど歩いただけだったので、今朝のようにいっそのこと最初からスリッパの方がいい。スリッパのままで村上佳菜子のように舞い、高木美帆のように早く滑った。どうしてあの2人の名前なのか自分でも不思議だったが、その2人の名前を思い出して氷の上でしばし遊んだ。ああ、ヒーローってこうして夢を与える存在なのかと、珍しくその種の人達を肯定した。彼女たちがアマチュアって事が大きいのかもしれないが。  何十年も記憶にない氷の上の感触を子供のように楽しんだ。氷の上で滑りながら今年もまた、軽率に口を滑らすことと、上滑りな知識をひけらかすことを戒めた。この文章を読んでくれている人がもし受験生なら、滑らないで欲しい。陽はもうさしているのだから。