初氷

 気象台の発表とは異なるかもしれないが、今日が僕にとっては初氷だ。朝中学校のテニスコートを周回している時に、数カ所、昨日の雨の名残の小さな水たまりに氷が張っているのを見つけた。何の習性か知らないが、そんなものを見つけたら必ず上に乗って氷の硬さを確かめてみる。さすがにまだ12月だから乗っても割れない強者ではなかった。少し体重をかけるとバリバリと音がしてヒビが入るが、氷の下に閉じこめられた水が移動して、それに伴って枯葉たちが万華鏡宜しく踊る。 ただ、こんな情緒を楽しむ余裕はない。凍り付いた朝以上に僕の心は凍っている。昨夜の夢はそんな僕の心を反映していたのかもしれない。いくら考えても直接的な引き金は思い浮かばないのだが、常日頃決して忘れ去ることが出来ない怒りと共に暮らしているから発火したのだろうか。  何故か僕はガソリンスタンドの主だった。そこに山本太郎がやってきて、ガソリンを入れるのだが、原発問題で意気投合してお互い頑張ろうと言うことで別れた。僕は鍼の先生が名付けたように「動かずのヤマト」だから、お互い頑張ろうなどと言われると疲れてしまう。僕は自分の長年の経験で見つけた流儀でしか対処できないから、そんなに力にはなれないよなと思いながら目が覚めた。  氷の下に見つけた情緒と、夢でもけだるい日常のギャップに苦笑しながら一日が始まった。